「副業が禁止」されている公務員の方も、ふるさと納税の返礼品の受け取りや税金の控除を受けることができます。
- 公務員はふるさと納税を利用できるのか
- 公務員がふるさと納税を利用したら、勤務先にバレるのか
上記のポイントに加えて、利用するにあたっての注意点や控除限度等の算出方法、ワンストップ特例制度について税理士が分かりやすく解説します。
※本記事は、加藤公認会計士・税理士事務所の監修のもと作成しております。
「副業が禁止」されている公務員の方も、ふるさと納税の返礼品の受け取りや税金の控除を受けることができます。
上記のポイントに加えて、利用するにあたっての注意点や控除限度等の算出方法、ワンストップ特例制度について税理士が分かりやすく解説します。
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公務員はふるさと納税を使えるのか不安に思われがちですが、結論から言うと公務員の方もふるさと納税は利用できます。
ふるさと納税とは、自己負担額2,000円を除いた寄付の全額が、所得税・住民税から控除されるしくみです。寄付をした地域の特産品・名産品がお礼の返礼品がもらえることから、今注目が高まっています。ふるさと納税は、金銭的な利益が発生すると思い副業に当たるのではないかと心配されている公務員の方も多くいるようです。
確かに、公務員はアルバイト等の副業が禁止されています。土地の賃貸などを除いて、管轄部門の長に許可を取らない限り副業をしてはならないという取り決めが「国家公務員法103条と104条」・「地方公務員法38条」によって定められています。
ふるさと納税への参加は確かに金銭的な利益が発生するのですが、ふるさと納税はあくまで「寄付」になります。「寄付」はアルバイトといった副業行為には当たりませんから、公務員がふるさと納税を行うことはまったく問題がありません。
つまり、公務員やサラリーマンであろうが関係なく誰でもふるさと納税に参加できます。もちろん自分が公務員である場合だけでなく、公務員の家族がいる家庭もふるさと納税は可能です。
公務員がふるさと納税を活用することは「法律上」は、まったく問題がありません。
しかし、「法律上」では問題がないとはいっても「立場上」では問題があるのではないかと不安になっている方もいるのではないでしょうか?
ふるさと納税をすると、寄付をした先の自治体の税収は増えます。
ご自身が勤めている自治体の税収になるはずの税金が、他の都道府県や自治体に行くことになり、ご自身が働いている地域の税収が減ってしまうという点も考慮しておきましょう。
そして、ふるさと納税とは「総務省」が発案して国が推進している制度です。控除といった個人の利益につながる点ばかりがクローズアップされがちですが、ふるさと納税とは過疎化等で歳入が確保できない自治体の収入を確保して、地方を活性化させるために必要な制度です。
多くの人がふるさと納税を利用すれば地方を活性化させることができますし、結果的に日本全体をより良くしていくことに繋がります。公務員という「立場」だからこそ地方を活性化させるために、国が推進している「ふるさと納税」に協力することはとても意味があります。
ふるさと納税はふるさと納税サイトを利用して行うことができます。あなたにぴったりのふるさと納税サイトを診断するにはこちらの10秒診断をご利用ください。
ふるさと納税は寄付をすることで自治体からお礼の品がもらえます。このお礼の品とのことを「返礼品」と呼びます。「返礼品」はお米や牛肉、魚介類にフルーツなど、その地方の特産品である場合が多く、欲しい商品や食べたいものなどを選んで寄付することもできます。
他にも日用品や工芸品、家電などジャンルは多岐に渡ります。多種多様な返礼品があるので、食費や日用品の節約として活用する方も多くいます。
さらに、ふるさと納税は自身で応援したい地域を選んで寄付することができます。公務員の方の中には地域活性化に興味を持っている方も多くいるかと思います。ふるさと納税によって、地方に寄付をすることで地域活性化に貢献できる点もメリットだといえるでしょう。
また、震災などで被災自治体に対する寄付を行うことも可能です。災害支援寄付のほとんどの場合、返礼品はありませんが被災自治体に速やかに、直接寄附金として届きます。
一般的な義援金や支援金の場合、被災地の意向とは違う部分にお金が使われてしまうこともありますが、ふるさと納税の場合直接自治体に届けることができるので、寄附金として使う方も多くいます。
次に、公務員がふるさと納税を活用するデメリットを見ていきましょう。
大きなデメリットとしては、「確定申告」を行う必要がある場合があるという点です。「確定申告」とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得にかかる税金(所得税及び復興特別所得税)の額計算し、税金を支払うための手続のことです。
一般的な公務員の場合は「確定申告」をする必要がないので、普段ならしなくてもいい「確定申告」を行うため、戸惑いや面倒臭さを感じてしまうかもしれません。「確定申告」と聞くと面倒な気がしますが、一つ一つきちんと手順を踏まえれば簡単に行うことができます。
寄付する自治体が5団体以下の場合は、「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告をスキップすることができます。ふるさと納税以外の理由で確定申告をする必要がない人は、寄附を5自治体以下にすることを一つの目安にしても良いかもしれません。こちらについては、後ほど詳しく説明します。
ふるさと納税制度を最も利用しているのは「公務員」と言われているほど活用している人は多い反面、公務員の中にはふるさと納税をすることに批判的な方もいます。そのような方は「公務員が自身の自治体の税収を減らしても良いのか」と考えている方が多いようです。
このような思想を持つ同僚や上司にふるさと納税をしていることを批判されるかもしれないというデメリットがあります。
ですが、ふるさと納税を通して地方の活性化を応援するという行為は、公務員として間違った行為ではありません。そして、誰がふるさと納税をしているかは、本人がふるさと納税をしていることを周囲に話さない限り、知られることはまずありません。
「もしかしたら周囲にふるさと納税に批判的な態度の方がいるかもしれない」ということを頭に入れておいて、職場ではふるさと納税の話をしないという配慮をしておけば、このデメリットを回避することができます。
先ほど、ふるさと納税するデメリットの1つに「確定申告」を挙げましたが、「ワンストップ特例制度」を使うと「確定申告」する必要がなくなります。
「ワンストップ特例制度」とは、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる仕組みの名前です。公務員でも「ワンストップ特例制度」は使えます。
公務員やサラリーマンの方は年末調整を行なっていますから、確定申告を行う必要がありません。所得税の納税は、もともと源泉徴収されていますから、確定申告は不要になるのです。ですが、自治体などに寄付を行なったら、その寄付金額に応じて所得税や住民税が控除されます。ふるさと納税は「納税」という単語がついてきているので勘違いしがちですが、実際は「納税」ではなく「寄付」です。
そのため、確定申告によって納税の控除を受けて還付金を受けとる必要が出てくるわけです。ふるさと納税では控除限度額に応じて「寄付金額」から自己負担額の「2000円」を引いた金額が控除の対象になってきます。
原則的にふるさと納税は確定申告が必要になりますが、「ワンストップ特例申請」と呼ばれる制度を利用すれば、確定申告が不要になることもあるのです。
ワンストップ特例申請の対象となる条件としては、以下の2つがあります。
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税で寄付をする自治体が5つまでと決められています。仮に、6つの自治体に寄付をしてしまったのであればワンストップ特例制度の適用外になるので注意が必要です。
また、ここで気を付けておきたいのが、寄付をした回数ではなく、寄付をした自治体の数によって「ワンストップ特例制度」が受けられるか否かが変わってくる点です。
“1つの自治体に7回寄付”をしたとしても、寄付をした自治体は一つですからワンストップ特例を受けることができます。
ただ、“7つの自治体に1回ずつ寄付”をしたらワンストップ特例を受けることはできません。両者とも寄付をした回数は同じですが、ワンストップ特例制度を受けられるか否かが変わってくるので注意が必要です。複数回ふるさと納税をしたい時は、同じ自治体へ複数回寄付をする方が良いでしょう。
次に、ワンストップ特例制度を利用できる条件として、もともと確定申告不要の人であることが大切になってきます。たとえば、ふるさと納税で寄附をしてもしなくても確定申告が必要な方はワンストップ特例制度を受けることができません。
ふるさと納税以外の控除や、事業所得や年収が2000万円以上ある公務員の方は確定申告が必要になります。
ワンストップ特例制度の対象であれば、申請を行う必要があります。
申請の手順は以下の4つのステップを踏みます。
ワンストップ特例制度を受けるには、「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」というものを記載して、各自治体に送ります。「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」はインターネットからもダウンロードが可能です。
この申請書は、寄付した自治体から「寄付金受領証明書」とともに送られてきますので、インターネットの環境が無くても書類を受け取ることができます。
記載する内容は住所や個人番号といった自身の簡単な個人情報と寄付した金額の2つだけです。
申請書を受け取ったふるさと納税先の自治体は、寄付金額などの記載に間違いがないかを確認します。ここで間違いがあれば、確認の連絡がきます。
寄付内容に誤りがないことが確認できれば、ふるさと納税先の自治体が申込者の住んでいる自治体の役所に「寄付があった」という事実内容の連絡をします。
寄付があったという連絡を受けた自治体が、内容を確認して住民税を減らす手続きを行います。
ふるさと納税をした翌年の住民税が減額されているかを確認します。減額が確認できれば、減額された住民税を払っていきます。
このように4ステップでワンストップ特例制度の申請は完了です。ふるさと納税をした本人がやることは①の申請書の記載と送付だけなので、簡単に申請を行うことができます。
ワンストップ特例制度の詳細はこちらの記事でも解説しています。
ワンストップ特例制度に当てはまらなかった場合は確定申告が必要となってきます。
確定申告は以下の3ステップで行うことができます。
ふるさと納税をした場合、自治体から返礼品と共に「寄付金受領証明書」が届きます。これを受け取って大切に保存しておきます。
確定申告は基本的に2月中旬から3月中旬に行う必要があります。この際に、保存しておいた「寄付金受領証明書」を税務署に「個人番号確認書類」と「本人確認書類」と一緒に添付して確定申告書を提出します。これでふるさと納税の確定申告は完了です。
なお、電子申告の場合は、「寄付金受領証明書」の添付が省略できます。
確定申告を行なった日から、早い場合は一月程度で所得税の還付があります。そして、ふるさと納税で寄付した分だけ控除された「住民税」の決定通知書が勤務先経由で届きます。
以上で確定申告は完了です。基本的に公務員であっても、普通のサラリーマンと確定申告やワンストップ特例制度の利用は変わりません。
結論から言うと、勤務先にバレる可能性はあります。
ふるさと納税の寄付金額の控除は、ワンストップ特例制度を利用の場合は「住民税から控除」、確定申告を行う場合も「所得税から還付+住民税から控除」となるので、いづれにしても住民税からの控除が発生します。
そして住民税は各自治体が管理していることに加えて、毎年5月か6月頃に給与明細と一緒に勤務先から渡される「住民税の決定通知書」に寄付による税額控除が明記されるためです。
一方で、禁止をされているわけではないので、公務員の方でもふるさと納税を行う方は多数存在するようです。
勤務先の管理職の方がふるさと納税に対して否定的な意見を発信している場合は、ふるさと納税を行うとしても「自分の生まれ故郷や育った土地に対して寄付をする」「応援したい理由が明確な自治体に寄付をする」など、ふるさと納税の本来の趣旨から逸脱していないことを心がけて行動するのが良いと思われます。
ふるさと納税の控除額は自分でも計算をすることができます。この計算式は公務員であってもサラリーマンであっても変わりません。
▼所得税の控除の計算式
(ふるさと納税寄付金額-2,000円)×10%
▼住民税の控除(減額)の計算式
(ふるさと納税寄付金額-2,000円)×90%
たとえば、公務員のAさんが4万円のふるさと納税を行なったとしましょう。
この場合は、
(4万円-2000円)×10%=3800円
(4万円-2000円)×90%=34200円
となりますから、Aさんは所得税の還付金として、3800円が振り込まれます。さらに、翌年に34200円が住民税から減額されるわけです。
ただし、この控除の計算額とまったく同じにならない場合があります。なぜなら、控除金額の上限が年収や家族構成で定められていて、この上限以上は減額がされないからです。
たとえば、年収が300万円の公務員の場合、
独身あるいは共働き:28000円
夫婦:19000円
共働きで高校生の子どもが一人:19000円
共働きで大学生の子どもが一人:15000円
夫婦で高校生と大学生の子どもがそれぞれ一人:なし
がそれぞれの上限金額になります。
つまり、先ほどのAさんが年収300万円の独身公務員だった場合は、控除上限が28000円ですから、寄付した4万円のうち12000円分が控除の対象外になってしまいます。
この控除の上限金額は家族構成や収入などが考慮され、複雑な計算をしなくてはなりません。限度額計算シミュレーションを使うと面倒な計算をせず算出が可能です。
復習もかねて、ふるさと納税で確定申告をするときに注意しておきたいことは大きく3点あります。
ワンストップ特例制度を利用する場合「寄付金税額控除に係わる申告特例申請書」を自治体に送らなくてはならないことを確認しましたが、この申請書は寄付をするごとに送付をしていかなくてはなりません。
たとえば、Aという自治体に5回寄付をしたとしましょう。この場合は、5回にわたってAという自治体に申請書を郵送しなくてはならないのです。自治体ごとに申請書は一枚でいいというわけではありませんから、注意が必要です。
確定申告は大体2月中旬から3月中旬にかけて行う必要があります。対して、ワンストップ特例に申込をする締め切りは1月10日頃です。
確定申告が可能となる時期が2月ですからワンストップ特例制度もそのくらいだろうと誤解して、提出期間が過ぎていたということが起こっていますから注意しましょう。仮に、締切日を勘違いしていてワンストップ特例制度への申込ができなかった場合は、特例を受けられずに確定申告を行う必要が出てきてしまいます。
ふるさと納税のワンストップ特例制度が利用できる条件に当てはまっていたとしても、医療費や住宅の控除を受ける場合は、確定申告を行わなくてはなりません。
ふるさと納税以外に医療費控除などで確定申告をする必要がないかという点もしっかりと確認しておきましょう。
ワンストップ特例は 所得税の確定申告が不要ですが、この場合「所得税は控除されないの?その分は損するんじゃないの?」という論点があります。
確定申告
所得税控除 5%~45%
住民税控除(基本分)10%
住民税控除(特例分)100%-(所得税率5%~45% + 住民税率10%)
控除 合計 100%
ワンストップ特例
所得税控除 0%
住民税控除(基本分)10%
住民税控除(申告特例控除)100%-住民税率10%
控除 合計 100%
ワンストップ特例では、確定申告しないため、所得税の控除がとれない。その代わり、住民税控除(申告特例控除)が用意されています。つまり、確定申告であってもワンストップ特例であっても控除額は同じです。損も得もありません。
これまで、説明してきましたが公務員であったとしても「ふるさと納税は利用できます。」ふるさと納税は副業ではありませんから、公務員であっても法律上の問題なく利用することができます。
さらに、公務員の方もふるさと納税を利用することで、一般のサラリーマンと同様に控除が受けられるので、公務員もふるさと納税を行った方がよいです。
また、自身にメリットがあるだけでなく、ふるさと納税をすることで、地方を活性化させるという国の推進課題の支援をすることができます。
ただし、一定の金額を超えると、控除が受けられないという上限が存在します。この上限を超えて寄付をしてしまうと、罰金や罰則があるわけではありませんが、税の控除が受けられずに損をしてしまいます。
仮に、その自治体に何らかの強い思い入れがあって、ボランティアの意味も兼ねてふるさと納税をするのであれば、上限の金額を超えても良いでしょう。しかし、あくまで返礼品が狙いなのであれば、上限を超すふるさと納税は、まったくの善意で自治体に寄付をしたことになってしまいます。まずは、ご自身の限度額を調べる必要があります。
ご自身の上限となる限度額はシミュレーションに家族構成や年収を入力すれば算出可能です。そして、その上限のギリギリのラインで寄付をするようにするのがポイントです。
また、ふるさと納税でもらえる返礼品は自治体ごとにさまざまな特色があります。その自治体が観光地ならば宿泊券などが返礼品としてもらえますし、自治体の特産品である高級な肉や海産物、フルーツなどがもらえます。
また、自治体によってはノートパソコンや最新家電といったかなり高額な返礼品をもらえることもありますし、動物園の動物の命名権や1日町長体験などの面白い返礼品も存在しています。返礼品のためにとりあえずふるさと納税をしてみるというのも良いですが、返礼品にもきちんと目を向けて自分が必要とするものをもらえば、節約にもつながります。
「ふるさと納税ガイド」は自治体ごとの返礼品をまとめて横断比較ができるサイトです。
ランキングなどを参考にしながら返礼品探しをしてみてください。