ふるさと納税で所得税の還付や住民税の控除を得るためには、「ワンストップ特例制度の利用」または「確定申告」が必要です。この2つのどちらを利用する必要があるかはその人の状況によって異なります。
この記事では、「ふるさと納税で確定申告が必要となる3つの条件」や「確定申告の書き方」についてわかりやすく解説していきます。
※本記事は、叶税理士法人/叶会計事務所の監修のもと作成しております。
ふるさと納税で所得税の還付や住民税の控除を得るためには、「ワンストップ特例制度の利用」または「確定申告」が必要です。この2つのどちらを利用する必要があるかはその人の状況によって異なります。
この記事では、「ふるさと納税で確定申告が必要となる3つの条件」や「確定申告の書き方」についてわかりやすく解説していきます。
※本記事は、叶税理士法人/叶会計事務所の監修のもと作成しております。
ふるさと納税の確定申告について、動画で要点を確認することも可能です。
まず手っ取り早く全体感をつかみたい方は、以下の動画をご覧ください。
ふるさと納税の控除を受けるには「ワンストップ特例制度」または「確定申告」で申請が必要ですが。上図の診断チャートを利用することで、「確定申告が必要か否か」が簡単にわかるようになっています。
確定申告が不要の場合、ワンストップ特例制度を利用することで寄附をした自治体に特例制度の利用申請書を提出するだけで確定申告をすることなく住民税が控除されます。ワンストップ特例制度について詳細を知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧ください。
確定申告とは、所得にかかる税金(所得税及び復興特別所得税)の額を計算し、税金を支払うための手続きです。
個人の所得の計算期間は1月1日から12月31日の1年間。確定申告書などの必要書類をそろえ、翌年の2月16日〜3月15日の間に税務署に申告・納税します。
ふるさと納税を行った方が確定申告を行うと、所得税の還付や住民税の控除を受けることができます。つまり、寄付した金額が戻ってくるということになります。
次の3つの条件のうちどれか該当する場合は、ワンストップ特例が利用できずふるさと納税で確定申告が必要です。
ワンストップ特例制度の対象となる人は、「ふるさと納税を行った自治体数が5つ以下の人」です。そのため、「6ヶ所以上の自治体にふるさと納税をした人」は確定申告をする必要があります。
ワンストップ特例の申請書提出が締切に間に合わなかった方も確定申告が必要です。ワンストップ特例制度の締め切りは翌年1月10日です。
せっかくふるさと納税をしても確定申告またはワンストップ特例制度を利用して申告しなければ、控除や還付が受けられなくなりますので、締切には十分ご注意ください。
2,000万円を超える給与を得ている方や、2カ所以上の会社から給与を得た方、副収入が20万円を超えた方は会社員でも確定申告が必要です。
他には自営業の方や不動産関連の収入がある方、ゴルフ会員権の売却で所得を得た方、公的年金を受け取っていても年間収入が400万円を超える方が確定申告の対象となります。
そういったふるさと納税の有無に関わらず確定申告が必要な方は、ワンストップ特例制度を利用できませんので、確定申告の際に寄附金控除の申請をするのを忘れないようにしましょう。
ワンストップ特例申請をした分はすべて無効になるので、確定申告ではワンストップ特例申請書をすでに送ったものも含めて、昨年に寄付を行ったすべての情報を再度記載する必要があります。
それでは、所得税の確定申告についてご説明しましょう。ふるさと納税に関係がある税金は所得税と住民税ですが、所得税の確定申告をすれば自動的に住民税の申告がされます。
ふるさと納税をしてから確定申告を完了させるまでの流れは以下の通りです。ふるさと納税をすると、自治体から寄附金受領証明書が届きます。寄附金受領証明書は確定申告に必要ですので、時期が来るまで大切に保管してください。
確定申告の時期が迫ってきたら、申告書を作成しましょう。必要書類や申告書の書き方は後ほどご説明いたします。
自分の年収や家族構成から計算される控除限度額は限度額シミュレーションを利用することで簡単にわかります。
申告書を作成する方法は、国税庁のホームページや税務署で配布されている用紙に手書きで記入、国税庁ホームページ内の確定申告書等作成コーナーでフォームに入力してプリントアウト、e-Taxを利用の3通りあります。
このうち手書きのものとプリントアウトしたものは、郵送や持参で税務署に提出しなければなりません。郵送する場合、確定申告の書類は信書扱いとなりますので、必ず「郵便物」や「信書便物」としましょう。提出後は不備がなければ受理され、所得税の還付や住民税の控除が行われます。
確定申告は毎年2月16日〜3月15日の1カ月間に行われます。
しかし、税務署の窓口は基本的に平日しか開いていませんので、2月16日や3月15日が土日と重なった場合はその翌月曜に期日がずれます。
今回2021年(令和3年)分の所得税確定申告書の提出期間は、2022年(令和4年)2月16日(水)~3月15日(火)です。
実は確定申告の期限を過ぎても書類の提出は可能ですが、無申告加算税が発生したり、提出が遅くなりすぎて本来の納付期限が過ぎてしまった場合は延滞税が加算されますので、必ず期限内に提出しましょう。
ふるさと納税をした場合の確定申告で必要なものは5点あります。
2021年より、国税庁が認めたふるさと納税ポータルサイトが発行する寄付証明XMLファイルを添付することで、寄付金受領証明書を用意しなくてもよくなりました。詳細はこちらの記事をご覧ください。
マイナンバー関連書類は、マイナンバーカードを持っている場合はそれだけでOKです。マイナンバーカードを持っていない場合は以下の2点を準備します。
確定申告書類の提出方法は次の2通りがあります。
税務署にわざわざ出向いたり郵送したりするのは面倒だという方には、e-Taxでの申告をオススメします。
e-Taxとは国税に関する手続きをインターネットですべて済ませることができる便利なシステムで、いつでも自宅で確定申告ができるため、忙しい方にオススメの方法です。e-Taxの利用方法は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2通りがあります。
「マイナンバーカード方式」でe-Taxを利用するためには、マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要です。
マイナンバーカード方式のメリットは、e-Taxのサイトからセットアップファイルをダウンロードしてセットアップした上で、マイナンバーカードのパスワードを使用して確定申告ができるため、利用にあたっての届出が不要です。
マイナンバーカード方式のデメリットは、対応しているICカードリーダライタの購入に費用がかかる点です。(マイナンバーカードに対応しているスマホもありますので、対応機種を持っていれば、ICカードリーダライタの代わりにそちらの利用が可能です)
また、マイナンバーカードは即日発行することができないため、マイナンバーカードを持っていない人は確定申告の期日までに手に入れられない場合もあるので注意が必要です。
「ID・パスワード方式」でe-Taxを利用するためには、特別必要な機械等はありませんが、事前に税務署でID・パスワードを登録する必要があります。
ID・パスワード方式のメリットは、ICカードリーダライタなどの特別な機械が必要ないこと。また、マイナンバーカードを所持していない場合でも、税務署で手続きをすればその当日から申請が可能なことです。
ID・パスワード方式のデメリットは、申請前に税務署に実際に訪れて手続きを行わなければならない点です。土日祝日は税務署はやっていない場所がほとんどですので、平日に手続きを行う必要があります。
申告書に受け取り方法を記入しましたが、全額が振込で戻ってくるわけではありません。
所得税分は申告書に記入した受け取り方法で還付されますが、住民税分は控除されて還元されます。
所得税から控除(還付)される金額は「確定申告書作成コーナー」で手続きの際に確認ができますが、以下の計算式でも算出が可能です。
(ふるさと納税の寄附金額-2,000円)×所得税率(所得金額によって0~45%)×復興税率
※控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限になります。
※所得税率は「課税総所得金額」を基に、以下の表から当てはまるものを適用します。
※「課税総所得金額」は「収入-所得控除」の計算で算出できます。
課税総所得金額 | 所得税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円を超え 330万円以下 | 10% |
330万円を超え 695万円以下 | 20% |
695万円を超え 900万円以下 | 23% |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
参考:国税庁
なお、ワンストップ特例制度を利用した場合は所得税分の還付も住民税に合算され、還付がなく住民税からの控除のみとなりますので、還付金を受け取りたいという方はワンストップ特例制度を利用せず確定申告を行うとよいでしょう。
住民税からの控除額は、毎年5月から6月にかけて届く「住民税決定通知書」の中の摘要欄に「寄付金税額控除◯◯円」と記載されていますので、そちらを確認ください。
確定申告というと難しいイメージがありますが、一度ポイントを押さえてしまえば翌年からは簡単に申告できるようになります。
今回は最も一般的な、1カ所から給与所得を得ていて年末調整も済んでいる場合の確定申告についてご紹介しますので、全体のイメージをつかんでください。
「確定申告書等作成コーナー」は初めて確定申告を行う方でも操作がしやすいため、今回の説明ではそちらを使用しますが、手書きの場合も記入内容は同じです。
まず、確定申告書等作成コーナーのページを開きます。
(1) 確定申告書作成コーナーのTOPで「作成開始」のバナーをクリック
(2) 提出方法を選択する画面が出てきますので、「提出方法」を選択しましょう。
「e-Taxで提出する」または「印刷して書面提出する」を選択します。e-Taxの場合はこの後に「マイナンバーカード方式」または「ID・パスワード方式」を選択します。
(3) 事前確認の画面では内容を確認の上「利用規約に同意して次へ」ボタンをクリックします。
(4) 「(元号)○○年分の申告書等の作成」から「所得税」へ進みます。
(5) 会社や年金以外で特別な収入がない方は「給与・年金の方」の「作成開始」ボタンをクリックします。
(6) 以下のように用意するものや注意事項が表示されますので、確認の上「次へ」をクリックして先へ進みましょう。
■事前にご用意いただくもの
―所得に関する書類
(例)・給与所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・保険会社から送付される個人年金の支払調書、年金支払証明書 など
―所得控除に関する書類
(例)・医療費の領収書
・生命保険料控除証明書
・寄附した団体などから交付を受けた寄附金の受領証 など
■注意事項(ご利用になれない方)
給与・年金所得以外の所得(事業、不動産、配当など)がある方はご利用できませんので、1つ戻って「左記以外の所得のある方」の「作成開始」を選択して作成してください。申告する方の生年月日を入力して「入力終了(次へ)」ボタンをクリックすれば、申告書への入力が始まります。
(7) ご自身の生年月日を入力し「入力終了(次へ)」を押します。
(8) 該当する事項にチェックを入れたら「入力終了(次へ)」をクリックする作業の繰り返しになります。「給与のみ」→「給与の支払者(勤務先)は1カ所のみである」「年末調整済みである」→「寄附金控除」のチェックをそれぞれ入れて進んでください。
(9) 源泉徴収票を見ながら金額を入れる画面がありますので、「①支払金額」「②所得控除の額の合計額」「③源泉徴収税額」を入力してください。
(10) 16歳未満の扶養親族がいるかチェックを入れる欄や、住宅借入金等特別控除関連の入力欄がありますので、該当する場合は入力してください。
※該当しない場合は「源泉徴収票の④から⑥欄のすべてに記載がない。」にチェック
(11) 源泉徴収票の一番下の欄に記載されている「支払者」情報を転記したら、給与所得の入力は終了です。
(12) 内容の確認画面が2つ続きますので、誤りがなければ次へ進みましょう。
その先では寄附金について入力をしますので、手元に寄附金受領証明書を用意してください。
(13) 「寄附金控除」の「入力する」ボタンをクリックし、次の「入力する」ボタンをクリックします。
(14) 寄付先から交付された証明書を基に、各項目を入力していきます。
複数の自治体に寄附を行った、あるいは同一の自治体に複数回寄附を行った場合は、件数分の入力を続け、すべて入力し終えたら「入力終了」をクリックしましょう。
(15) 入力内容を確認し、問題なければ「次に進む」をクリックしてください。
(16) 控除額の計算結果を確認し、「OK」をクリックします。
(17) 税額控除等の入力画面に戻るので、「入力終了」をクリックします。
(18) 所得税から還付される金額を確認し、「次へ」をクリックします。
(19)住民税の徴収方法(任意)、16 歳未満の扶養親族の有無(必須)、別居の控除対象配偶者・控除対象扶養親族の有無(必須)それぞれ該当する方は「あり」にチェックを入れましょう。
ありの場合、それぞれについての入力フォームへ移動しますので入力してください。
ここからは受け取り方法を入力します。
(1) プルダウンリストからゆうちょ銀行か、ゆうちょ銀行以外を選択してください。受け取り口座の入力もしくは場所の選択をして次の画面に進みます。
(2) 申告する方の情報や提出年月日などを入力します。
(3) ご自身と家族のマイナンバーを入力すればすべて完了です。
(4) 画面の印刷ボタンから印刷をした後は、「確定申告書A第一表(提出用)」の氏名欄に押印し、添付書類台紙に必要書類を貼り付け、「確定申告書A第二表(提出用)」も添えて税務署へ提出しましょう。
最後に、よくある質問と注意点をご紹介しますので、確定申告をする際の参考にしてください。
A確定申告をするとワンストップ特例制度は無効になります。確定申告時には、すでに自治体に申請した分も再度申告してください。なお、自治体への連絡は不要です。
申告を忘れた場合、提出期限から5年以内であれば控除してもらえる場合があります。詳しくは最寄りの税務署にお問い合わせください。
前項の質問への回答の通り、提出期限から5年以内であれば「還付申告」を利用して控除してもらえる場合があります。(※2019年分の確定申告は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、2020年4月16日まで延長されています。)
確定申告ができるのは本人か税理士のみです。
ワンストップ特例制度を利用しない場合、確定申告をすることで初めて還付や控除を受けることができますので、確定申告を忘れないようご注意ください。
また、自治体から送付された寄附金受領証明書の提出が必須ですので、紛失にご注意ください。
以上、ふるさと納税の確定申告についての解説でした。